どうして「派遣」議論にはまともなものがないのだろう。
2009-01-14


輿論を形成すべき社会問題を、
個人的なウサばらしのネタに使わないでいただきたい。



製造業への派遣労働解禁が誤りだったことを認めよ!
(森永卓郎/日経BP)

[URL]


「現在、これほどまでに雇用情勢が悪化した主要な原因は、
 1990年代に雇用政策の基本理念が大転換したことにある。」

雇用政策うんぬん関係なく、世界中で雇用情勢は最悪です。

「主要な要因」は不景気です。



「1990年代以前は、働く人の失業を防ぐための対策として、
 現在よりも対象が広く、期間も長い雇用調整助成金制度があった。
 そうした制度が充実していたために、企業は不況になっても労働者
 をクビにすることなく、雇っておくことができたのである。」

ご参考までに申しますと、一般にこれを「問題の先送り」と言います。

景気循環を前提に、そのうちどうにかなるだろう、という考え方です。

どうにかなることも多いですが、これを繰り返すと企業の成長は

鈍化し、雇用は既得権益化し、結局若い世代は雇用にありつけない、

ということが、まま起こります



「「労働者のクビをどんどん切り、その代わりに再就職を企業が
 支援する」という政策に一変した」


労働者のクビを切るのは経営側にとっても不経済な話です。

しょうがないから切るんです。常に。

「どんどん切る」??意味が解りません。



「失礼ながら、たとえば製造業の派遣労働者がクビを切られて、
 その人たちがIT業界やバイオ関連企業の技術者になれるだろうか。
 まずなれることはない。」

当たり前です。そんな想定は誰もしてません。


「会社をクビになった人が成長分野に移っていくという図式は、
 そもそも存在しなかったのである。」

極端な例から、華麗な論理の飛躍のご披露です。



「私はその点について竹中(平蔵)氏とけんか同然の論争をしたこと
 がある。(中略)「あなたは、日本国民を全員転職させるつもりか!」
 と私はあきれはてた。いくらなんでも、そんなことはありえない。」

”逆ギレ”はよく見かけますが、”逆あきれはて”とは新しいですね。


「今考えれば、とんでもない発想であることがよくわかる。
 だが、当時の日本ではこんな考え方がもてはやされ、
 経済評論家やエコノミストの大半が支持していたのである。」


経済評論家やエコノミストの大半は、とんでもない曲解を
しなかっただけです。


「財界が望んだ解禁の理由は、まぎれもなく次の二つである。
 一つは、賃金の低い労働者が欲しいということ。もう一つは、
 雇用調整がしやすい労働者−−つまり、いつでもクビが切れる
 労働力が欲しいということだった。」

「だから、今回のように、いったん不況が訪れたら、彼らが真っ先に
 犠牲になるということは、最初から織り込み済みだったといってよい。」

言葉使いは気になりますが、大筋はその通りです。

なぜならそうでもしてもらわないと日本国内で雇用を維持するのは

難しかったから。

そうでもしなかったらここ数年の拡大局面で企業が作り出した雇用は、

そのほとんどが海外に流出していたでしょう。


「竹中氏のいうように、失業した人たちが成長企業に職を得ることが
 できればいい。だが、現実には何が起こったか。レベルの高い産業
 にいくどころか、ホームレスになっているではないか。」

時間軸の考えを持ちましょう。

「レベルの高い産業」だって、今は不況の真っただ中です。


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